2020年02月18日

クマタカカメラ2019 まとめ


なんだか冬らしくない冬が続き、わけのわからない病気もはやりだして、
いろいろと気持ちの悪い今日この頃です。
とはいいながら、我々にとっては繁忙期。仕事はやらねばならんのです。

さて、昨年はクマタカさんに人工巣を提供し、そこでクマタカさんが
繁殖してくれました。巣に向けてカメラを設置していたため、繁殖状況を
詳細に把握することもできました。いずれどこかで発表しようかと思って
おりますが、簡単に状況をここで整理しておきます。
非常にマニアックな内容です。

【繁殖の進行】
・12/24 人工巣へ初飛来
・12/25 初巣材搬入
・3/2夕方 産卵
・4/19朝 孵化(抱卵日数49日)
・7/1 巣立ち(夜間に巣を開けていたことで判定、巣内育雛日数73日)
・9/10 巣への餌の最終搬入
・1/28 幼鳥飛来(ここまで生存を確認)

【巣への餌搬入状況】
・求愛・造巣期の搬入:1回
・抱卵期の搬入:1回(孵化前日)
・巣内育雛期の搬入:116回(搬入頻度=約1.6回/日)
・巣外育雛期の搬入:42回

10日ごとの搬入回数の推移を表すと以下のグラフのようになります。

餌搬入頻度.jpg

雛が大きくなるに従って必要量が増して、搬入回数が
多くなっているようにも見えますが、もしそうなら理想的に
餌が捕獲できていた、ということでしょうか。
また、巣立ち後も巣に餌の搬入が続き、雛は餌を巣で食べてますが、
次第に受け渡しのみが行われるようになったり、巣への搬入頻度が
低下していっています。

【餌の種類】
・哺乳類 4科9種
・鳥類 6科9種
・爬虫類 2科4種

これ以外に不明のものもあり、実際にはさらに多くの種を搬入
しているかもしれません。クマタカはいろんな種類の餌に依存
していることがわかります。餌の種類とそれぞれの搬入回数は
以下のとおりです。

餌種類.jpg

モグラがすごく多いように思いますが、確かな種類ではネズミは
含まれていません。地面の中にいるモグラをどうやって捕るんでしょうね。
夜行性のムササビだとかモモンガ、アオバズクなんかも不思議です。
あと、ヘビではシマヘビとアオダイショウが多いのですが、
同じく山の中には相当数生息するはずのマムシやヤマカガシは
搬入されていません。これは他事例でも同様で、
クマタカは毒蛇を見分けているのでしょうか。人間はヤマカガシを
毒蛇と認識したのはここ数十年のはずですが、クマタカはもっと前から
知っていたんでしょうか。
こういった調査をすると、クマタカの生態についていろいろと
解明される部分も多々あるのですが、同時に謎も深まります。
いずれにせよ、クマタカは既往の文献では山の中の動物を捕れるものは
何でもとる、と表現されているものがありますが、実際には明らかに
ねらって餌を捕っているようです。ヘビの種類もそうですが、
同じ餌の搬入が何回も続くことがよくあります。時期的に捕りやすい、
というよりも1回捕れると味を占めて、同じ餌をねらっているような感じです。

餌の搬入回数を分類群ごとにグラフ化すると以下のようになります。

分類群別搬入回数(巣内育雛期).jpg

分類群別搬入回数(巣外育雛期).jpg


巣内育雛期は哺乳類が最多で爬虫類(主にヘビ)が続きますが、
巣外育雛期には爬虫類が最多で鳥類がこれに続いて哺乳類が
最も少なくなってます。
分類群別の搬入回数の推移は以下のとおり。

分類群・時期別餌搬入回数.jpg

鳥類の繁殖期には抱卵中の巣や雛をねらいやすそうなので、5月ぐらいに
増えるのはわかるのですが、いったん減ってまた7月下旬から増える理由が
わかりません。また、爬虫類は梅雨の時期に増えそうなものですが、
6月下旬から7月上旬は少なくなってます。

【餌重量比】
餌の種類や搬入回数だけ見ても、餌には大小があるので何が主要な餌と
なっているか見えてきません。そこで、餌の重量を推定してみることに
しました。これまでも巣に搬入された餌の重量を分析された事例は
あるのですが、いずれも計測されている成体の重量を当てはめて全搬入重量
を計算されています。これはこれで一つの目安となるかもしれませんが、
実際には哺乳類など成体が搬入されることの方が少なく、幼獣とでは
ものすごい重量の違いが生じます。
例を挙げると、今回はイノシシの幼獣が搬入されています。イノシシの成獣は
大きければ100kgを超えますが、これをカウントすればこれだけでおそらく
クマタカはおろかイヌワシの搬入餌重量を超えてしまいます。
今回の場合は成体と判定できる餌の大きさを目安に、これと同じ大きさの
個体は種類が違っても同じ重さと推定しました。例えば、リスの成体は
文献資料から250gとして、これと同様の大きさのイタチの幼獣も250gと
判定しました。このやり方だと、今回搬入されたイノシシの幼獣は
1kg程度でした。
まあ、正確性には欠けますが、成体重量をそのまま適用するよりは
マシではないか、と思います。また、実際には餌すべてを雛が食べる
わけではなく、親鳥が食べたり、過剰に搬入された場合には捨てられたり
することもあるので、残念ながらどうやっても育雛に必要な餌の量、
というのを算出するのは無理なような気がします。
とはいえ、こうしたやり方である程度、クマタカの雛が主に食べている
餌の種類、というものはわかると思います。
結果としては以下のとおり。

・巣内育雛期搬入重量:33.4kg
・巣外育雛期搬入重量:10.5kg
・全期間:43.9kg

クマタカの体重が2〜3.5kg程度ですから、すごく多くの餌を
捕ってくることがわかります。
分類群ごとの重量比は以下のとおりです。

餌重量比(巣内育雛期).jpg

餌重量比(巣外育雛期).jpg

餌重量比(全期間).jpg

重量比で見ると、さらに爬虫類(主にヘビ)の比率が巣内育雛期、
巣外育雛期ともに高まります。種別でいうと、シマヘビとかアオダイショウが
すごく重要な餌といえそうです。

もう少し細かい分析も試みたりしておりますが、今回はここまでとします。
いやあ、大変な作業でした。
今後は、一つの事例でクマタカ全体を語るのは危険なので、
他事例や私の他の結果と比較したり、私自身ももっとサンプル数を
増やしていこうと思っています。
幸い、人工巣のクマタカのつがいは、1月下旬から巣材運びに頻繁に巣に
飛来するようになっており、同じ巣で連続繁殖するかもしれません。
そうすると年によっての違いなんてことも見えてくるんですけどね。

IMAG0297.jpg

本日(2/18)の飛来画像です。
人工巣を提供したことで造巣作業の負担が減って、連続で繁殖する、
なんてことが言えればいいんですけどね。





posted by Kankyosekkei Co., Ltd. at 14:35| 生物調査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月08日

冬休み


この正月休みは長かったですね。
みなさまいかがお過ごしでしたでしょうか。
多くの方が9連休だったのではないでしょうか。
環境設計も12月27日に仕事納め、1月6日仕事始めだったので、
世間と同じく9連休でした。

私はというと、例年変わりないのですが、実家で何日か過ごす他は、
個人的なフィールドに行ってタカやワシと戯れる、ということを繰り返しています。
今年に限っては、実家のみなさまが海外に行くということで、
実家で過ごす日がさらに少なくなり、さらにタカやワシと戯れる日が多くなりました。
ただ、実家で飼っているウサギを預けられてしまい、自宅マンションとか現場に
連れて行くわけにもいかず、会社で飼ってました。
そのために休みの間に何回も会社に行くという・・・。

そんなわけで、とりたてて特別なことをしたわけではないのですが、
冬休み中に現場でしたこと見たことをご紹介します。

■クマを見た
滋賀県の山の中ですが、例年であれば12月の中旬頃には冬眠に
入っているはずのクマが、尾根上の岩場でしばらく昼寝をした後、
谷の方に降りていきました。



いつもの年ならば雪に覆われているところ、今年はまったく雪もないし、
暖かいので冬眠していないのか、あるいは餌が少なかったので、
冬眠できていないのか。まあ珍しい。温暖化の影響なんですかねえ。
こちらもクマがいるとは思っていないので、まったく警戒してませんでしたが、
ちょっとは気をつけた方が良さそうです。
ただ、大あくびを繰り返しており、さすがに眠そうでした。

■クマタカがシカを食う
谷沿いのかなり低いところから現れたクマタカの喉元(そのう)が
大きく膨らんでました。

DSC09956.JPG

その方向ではカラスやトビも見られたため、なんだか怪しい、
と思って見に行ったところ、シカの死体が複数、河川敷に転がってました。
これはクマタカが食べていたのではあるまいか、
と思ってセンサーカメラを置いておいたところ、
次の日に見事にクマタカが写ってました。
グロい画像があるので苦手な方は見ないでください。


IMAG0001.JPG

IMAG0002.JPG

IMAG0005.JPG

DSCN6171.JPG

なかなかいいショットが撮れました。
狙いどおりです。
ただまあ、なんでこんなものが転がっているか、
ということを考えると、あまりいい気持ちもしません。

山にはシカが増えすぎて植生が衰退するし、麓では農作物にも被害を与えます。
そのため、シカの捕殺が推奨され、奨励金が支払われる自治体も増えています。
ただし、捕殺した場合には死体を持ち帰って処分するか、
山に埋めてくるかしなければならないはずですが、
ここでは何もかぶせられずに河川敷の目立つところに転がってました。

クマタカが食べていたシカ死体.JPG

ルール違反というかマナー違反というか、だいぶひどいですね。
山に行くとこういう死体がよく転がっているので、
役所の担当の方にこういう話をしたことがあるのですが、
「持ち帰るように指導しているので、そんなことはないはずだ」
とのたまわられました。
いやあ、現場を見ないで「はずだ」と言われましてもねえ。

絶滅危惧種のクマタカの餌にもなっていいんじゃないかと
思われるかもしれませんが、銃弾に用いられる鉛は動物にとって毒で、
鉛の破片を食ったクマタカは死んでしまうかもしれません。
また、先ほどのクマなどもシカの肉があるから冬眠しないのかもしれません。
そうすると、肉食に傾いたクマは、猟期が終わったら人を襲うようになる、
といったこともあり得るように思います。
そうでなくても、生態系のバランスが崩れて、
というようなことが危惧されています。

■オオタカの巣にカメラを設置した
3年前からクマタカの巣に画像送信型のカメラを設置して、
繁殖状況などを報告しておりましたが、今回はオオタカの巣にも
カメラを設置してみました。

IMAG0051.jpg

年末に設置したのですが、今のところカラスしか飛来しておりません。
この画像を見て「アレ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
詳細はまた後日。
もともと、3年前にクマタカと同時にオオタカの巣にもカメラを設置したのですが、
見事にフラれてオオタカは一度も飛来せず、ノスリがちらっときただけでした。
今回はどうなりますことやら。
またそのうち報告します。

そういえば、昨年、人工巣から巣立ったクマタカの幼鳥も観察してきました。

DSC09847.JPG

巣のカメラには11月以来写ってませんが、元気らしい。

さらに、イヌワシも見てきました。

DSC09995.JPG

私は神社や寺には初詣に行く習慣がないのですが、
イヌワシ詣でには毎年行ってます。

そんなこんなでとりとめもないですが、
私の冬休み日記でした。






posted by Kankyosekkei Co., Ltd. at 23:04| 生物調査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月06日

謹賀新年


新年明けましておめでとうございます。
本年も環境設計株式会社をよろしくお願い申し上げます。


年賀状2019.jpg

会社で作った今年の年賀状です。
昨年5月に育休から復帰したIさんが作成されました。
写真は私が提供したもので、何年か前にアラスカで撮影した
「ホッキョクジリス」です。
ネズミを含む数点をネズミの仲間として提供した中で、
一番ネズミから遠いものが選ばれました。
「これはネズミ目だけどネズミじゃないよ」
とは言ったのですが、カワイイからこれがいい、とのことでした。
カワイイは最強だそうです。

この年賀状を見た人の中には、
ネズミと勘違いして送ってやがる、
この会社は生物の調査をしているはずなのに、なんて情けない、
などと思ってしまう人がいるのではないかと心配になりますが、
干支レースに牛に乗っかって出場なんて芸当はネズミよりも
リスの方がふさわしい、実際はリスだったのではないか、
などという話があるとかないとか(デマです)。

まあ、この写真のように寒いところからでも顔を出して、
これから伸びていきましょう、というところですかね。

それではみなさま重ねてよろしくお願いいたします。


代)

posted by Kankyosekkei Co., Ltd. at 12:02| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする