2018年10月12日

クマタカカメラ H30総括


投稿も久しぶりですが、すっかり秋になりました。
現場に行っても気持ちのいい時期です。

といって、今回は最近の現場の話ではありません。
しばらくしていなかったので、猛禽ネタを。

以前も何度か書いてますが、私は研究と趣味、時には仕事を兼ねて、
クマタカなどの巣にセンサーカメラを設置しています。
それでもって、繁殖行動だとか餌内容だとかをより深く知ろう、というものです。
まあ、画像を見ているだけでも楽しい、というようなこともあります。

今年は、都合4カ所のクマタカの巣にカメラを設置しました。
以前も書いているところもありますが、今年の設置状況と結果を総括します。

@和歌山県某所
こちらは昨年から継続して設置しています。
昨年の場合は造巣期にわりと頻繁に飛来していましたが、
抱卵することなく繁殖に失敗。
今年は造巣期にまったく飛来なく、別の巣に移動したかな、
と思って抱卵期ぐらいに観察に行くと、繁殖していませんでした。
別の巣を作っているかどうかも不明。
しかしながら、6月になって何度か巣材を搬入。

180625宿♀?巣材搬入.jpg

使わないならとっととカメラを回収して別のところに設置したいのですが、
まだこの巣を利用する可能性があるようなので、今のところ継続設置。
来年に期待します。

A三重県某所
こちらは昨年末に設置しましたが、年末から1月早々にかけて、
わりと頻繁に飛来して、雌雄で造巣活動をしていましたが、
途中で巣を変えてしまいました。
枝先型のやや不安定な巣だったのですが、
巣に穴が開いていたので、それを嫌がったのかもしれません。
ただし、別のところでも結局のところ育雛中に繁殖活動を中断したようです。
2年連続して育雛中に失敗しており、その原因把握のためにも
カメラのかけてある巣を使ってほしかった。
営巣地移動確認後すぐにカメラを回収しています。



以上2カ所は営巣期前にカメラを設置していたところ、
以下は育雛中に巣に登ってカメラを設置したところです。
育雛中に巣に登るのは繁殖活動を阻害する可能性がないとは言えず、
これまでの様々な経験をふまえた最大限の配慮の上で実施しています。
また、ここでは公表を控えますが、本来の目的は別のところにあって、
カメラの設置は付随的なものです。

B滋賀県某所
こちらは巣から離れるようになる1週間ぐらい前をねらってカメラを7月中旬に設置しました。
実際、設置から5日後に枝移りするようになり、1週間後には夜間に巣に戻っていません。
ただし、ほぼ丸1日巣を離れていたのは設置後約20日たった8月上旬になってからで、
その後もほぼ毎日巣に姿を見せ、カメラを回収した9月下旬まで
ほぼ毎日巣に飛来していました。巣立ってからも巣が餌の受け渡し場所となっていたようです。
クマタカの場合、巣立ち時期という定義がなかなか成り立たないのですが、
このつがいの場合、特に顕著で、2ヶ月たっても「巣断ち」できていないようでした。
カメラのタイプはやや旧型の非送信型センサーカメラで、静止画のみを撮影しています。
動きに反応して撮影していますが、1回撮影すると10分インターバルをおく設定です。
ちょっとカメラの性能も悪くて、薄暗いと全然分からなかったり、
巣全体をカメラがとらえていなかったり、ということもあって、
餌の種類がわからないものも多くありました。
それでも、餌搬入があったであろう機会のうち、
概ね6割で哺乳類か、爬虫類か、鳥かぐらいは識別できました。
分からなかったものの多くは親が既に途中まで食べた肉塊であったり、
小さくてすぐに食べられてしまったものと考えられます。
また、鳥はそのまま搬入されることが少なく、分からないものが多いです。
代表的なものを紹介すると、

180715後J♀.JPG

こちらはカメラ設置の次の日にやってきた親鳥(♀)と雛(下)。

180805後♂餌.JPG

こちらはクマタカの餌としては代表的な餌であるニホンリスと
それを搬入した♂です。
雛はこのとき既に巣にはいません。

180811後J♀餌.JPG

こちらは下に雛というか既に巣立っている幼鳥が左側にいて、
右上に巣立ってからも餌を給餌する♀がいます。
♀の下にはこのときの餌であるアナグマが眠ってらっしゃいます。
なんだかこのあたりではアナグマの幼獣がよく餌になっているようです。

180730後J餌.JPG

これはわかりますかね。光線のかげんでわかりづらいのですが、
真ん中に雛がいて、その左側が餌です。
足の形からは鳥とわかります。でも4本あるような。
鳥の雛が2個体つながって見えているようです。
これは1時間ぐらいで連続で搬入されているので、
同じ巣でねらって捕獲したものかもしれませんね。

180724後J餌.JPG

こちらは今回のハイライトです。個人的には驚きでした。
まず左下に雛がいます。
左上にはシマヘビがあります。このあたりはまあわかりやすいのでは。
では、右上にあるのはなんでしょう。

生きている姿とだいぶ違って見えるので、わりと生き物に詳しい方でも
「なんじゃこりゃあ」という感じだと思います。

これ、イノシシの幼獣です。
えー、と思われるかもしれませんが、よく見てもらうと、
足の先にひづめが見えると思います。
この段階でシカ、カモシカ、イノシシに絞られます。
後は図鑑等で見比べていただければ。
足の長さとか耳の形とか。

狩猟で撃たれたイノシシがクマタカの餌になっている例は現場でも
見たことがありますし、文献などにも載っていますが、
巣への搬入物としては他では知りません。

他の特徴としては、一般的にクマタカの代表的な餌とされるヘビ
(特にアオダイショウ)がここでは少ない。
その分、哺乳類と鳥類が多いのですが、鳥はハトよりも小さいものが多く、
哺乳類は幼獣が多いとはいえ、タヌキやアナグマ、イノシシなど
ボリュームがあるので、量としては哺乳類で大部分を占めそうです。

C滋賀県某所
こちらはBの隣接つがいですが、繁殖の進行はBよりも1ヶ月ほど早く、
巣から離れるようになるのはもっと早かったようです。
こちらは巣を特定した段階で、地上に画像送信型カメラを設置して、
繁殖の進行状況を見守ってました。
そのときの画像がこちら。

180506高望J♀.JPG

設置時に思っていたより雛が小さくて早々に退却する必要があったことや、
体調が悪くて設置するのが精一杯だった、というようなことで、
ピントがぼけてます。

その後、また枝移りし始める1週間前ぐらいをねらって、
巣に登ってカメラを設置しました。
こちらは送信型で、静止画と動画の両方を撮影しました。
画質もBに比べるとだいぶいいですが、やはり巣の全体を捉えていません。
餌の受け渡しは巣の中央でも、給餌は巣の外側で行われることが多く、
搬入直後を撮影できていないと、わからないまま、ということがよくありました。
インターバルはここでも10分で、搬入直後はなかなか撮影できていません。
加えて、餌が搬入されると、

180618高J餌.jpg

こんなふうに、餌を親鳥に食べられないように、
雛がすぐ覆い被さってしまうので、餌がなかなか見えません。
このようなことから、特にすぐ食べ終わってしまうような餌は
どうしても分からないのですが、
ここの場合には8割近くの餌の種類がだいたいわかりました。
やっぱり動画がついているとわかりやすい。
中にはカナヘビとかかなり小さい餌も含まれます。
また、滋賀県では初記録ではないか、という種類も含まれていました。
他事例でもこうしたクマタカの巣の映像から、その地方で分布初記録、
という種類が確認されたことがありますが、
クマタカは多種多様な餌を捕る名ハンターなので、
クマタカの巣にカメラを設置すると、なかなか良い動物相調査となります。

それでは映像を紹介します。

180619高J餌.jpg

こちらは最初からちょっとすごい。
真ん中やや上にはリスがあります。
その下の足はシカのものです。
搬入したときは付け根までありました。
すごいですね。
幼獣とはいえシカを襲うんですね。
他のところではシカの子が丸ごと巣にあったこともあります。
クマタカ恐るべし。
ここの場合は、他で親鳥がある程度捌くか、食べてから一部を搬入したようです。

180622高♀餌.JPG

これは、モグラをくわえて♀が巣に飛来したところです。
雛は右の枝にとまってまして、伸びかけの尾羽だけ見えます。
まだ6月下旬ですが、枝移りしています。



続いては♀がスギの青葉を巣に搬入したところ。
動画ですが、容量低下のため画質はやや落としています。
巣立ちの時期なのにまだ巣材を入れてます。
雛はもう巣にいないんですが、惰性でしょうか。
それとも巣を目立たなくするためでしょうか。



また♀が食べかけのアナグマを搬入したところ。
♀の爪の下にはその前に搬入していたモグラもあります。



最後は♂がヘビを搬入したところ。まだ動いています。
種類は分かりますかね。
鎖模様が見えるからマムシ?

いや、たぶん細長いところや微妙な模様の違い、
色などから似ていますがアオダイショウの幼蛇です。
頭も映っているし。
クマタカなどの猛禽類の餌にマムシ、とされているヘビが
結構含まれていますが、マムシとアオダイショウやシマヘビの
幼蛇は似ているというか、擬態しているので、よく見えないまま、
間違われていることが多いのではないか、と思っています。

ここの巣でもやっぱりヘビは少なくて、哺乳類が多く、鳥類が続きます。
ただし、哺乳類ではモグラが3分の2を占めていて、
Bに比べるとモグラなど小さめの種の割合が高くなっています。


今年の結果は以上です。
やっぱり猛禽類は望遠鏡などで観察するだけでもおもしろいですが、
より深く知るためにはこうしたカメラによる調査も必要なものかと思います。
今回、餌の種類が把握できた2カ所でも、隣接したつがいなのに餌の
内容はだいぶ異なります。
さらに、昨年やった場所もこれら2カ所と隣接したつがいですが、
そこは半分ぐらいヘビが占めているなどかなり違いがあります。
この違いは性格など個体の特性によるものなのか、繁殖の進行状況による
微妙な時期の違いによるものなのか、植生の違いによる生息する
餌動物の違いによるものなのか。
また、この地域でも以前はウサギが代表的な餌とされていましたが、
昨年から今年のこうした調査の結果では、ウサギはまったく
確認していません。餌の種類も変わりつつあるのでしょうか。
考察ポイントや多々あり、興味は尽きません。

今後もこうした調査は続けていこうと思います。
また機会があれば本ブログにても紹介します。

もう少し事例が集まれば、学会とか機関誌とかで発表できるかな。

まあ、お好きな方はお楽しみに。

またやたら長く書いてしまった。
小分けにしてもいいのですが、何度も書くより時間のあるときに
まとめて書く方が楽なので。





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2018年05月07日

クマタカカメラ その後 三重版


つづいて、三重県に設置したクマタカカメラのその後。

こちらは昨年末に設置。
年末年始にかけてよくクマタカが飛来し、造巣活動。



雌雄が初めて飛来したときの映像です。



その後も順調に巣材運び、巣材整理に飛来していたのですが、
1月上旬に飛来がストップしてしまいました。
何が気に入らなかったのか。
昨年、この巣では育雛までやっていたようなのですが、
どうも途中で繁殖に失敗してしまったようです。
そういうことがあったので、この巣をいやがったんでしょうか。

その後はこのカメラも他のものを記録するだけのカメラに移行。

IMAG2816.jpg

こちらシジュウカラ。
こちらは日中しか撮影していないので、鳥が中心ですが、
やっぱりカラ類はよくやってきます。

そんなわけでクマタカが飛来しなくなった状況から、別の巣を設けて繁殖しているのでは、
と考えて観察に向かったところ。

DSC04292.JPG

雄の飛来があり、向かった先に巣を発見。

DSC04303.JPG

DSC04305.JPG

だいぶわかりにくいのですが、上下の画像を見比べてください。
中央やや左のスギの葉っぱに穴が空いているように見えるところに注目していただければ、
上は何も映っていないのですが、下ではクマタカの頭がのぞいています。
この位置に巣があって、抱卵しているようです。

かなり遠方からの観察なので、わかりずらくてすいません。

結局のところ、カメラを設置していた巣から100mぐらい上方の斜面に新しい巣を作ってました。
カメラの結果としては残念ですが、繁殖していたのでまあ良し、としよう。

そんなわけで、今年クマタカの繁殖状況観察用に設置した画像送信型カメラはいずれも空振り。
まあ、クマタカの繁殖成功率は3割程度といわれているし、営巣地を移動することもよくあること。
仕方がない。
特に三重県に設置したカメラはアングルがよかったので、残念だなあ。

ここで設置していたカメラは無駄になったので、早々に回収してしまいました。
また別のところでまたの機会に取り組みます。





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クマタカカメラ その後 和歌山カメラ


ゴールデンウィークが終わってしまいました。
といっても、社会人になって以来、この時期は調査業務のとっかかりであったり、
鳥の繁殖期にあたるので、あんまりまとめて休めた記憶がない。
ところが、今年は端境の平日まで休むほどではないですが、
わりと暇で、連休はしっかり休ませてもらいました。

その間、ライフワークになっているクマタカの繁殖状況の観察に行ってました。
なんのことはない。休みといっても仕事でやっていることと大して変わりません。

ところで、正月早々に今年はクマタカの2つの巣に遠隔監視カメラを設置、
繁殖状況などを本ブログで紹介するとしておりましたが、その後、
まったくそれにはふれておりませんでした。
なぜかというと、結果が芳しくないから。

ですが、ひょっとすると興味を持たれている方もいらっしゃるかもしれないので、
結果を報告しておきます。

まずは和歌山県で設置しているカメラから。
カメラ自体は一昨年の年末に設置してからずっとそのまま。
昨年の繁殖初期には造巣活動に飛来してましたが、
そのうち飛来しなくなり、繁殖もしなかったようです。
夏頃に1回だけだったか飛来がありましたが、
今繁殖期はまったく飛来なし。
残念な結果となりました。
ただし、映像としてはいろんな動物が記録されています。

PICT0354.jpg

こちらムササビ。夜間はよくやってきます。

PICT0427.jpg

こちらはモモンガかな。
さっきのヤツよりだいぶ小さい。
上からの画像だとどうもよくわからない。

PICT0375.jpg

こちらヤマガラ。カラ類はよく来ます。特に繁殖期になってから。

PICT0429.jpg

こちらカケス。

PICT0407.jpg

こちらイカル。

PICT0386.jpg

こちらアオバト。

こういった感じでクマタカがぜんぜん飛来しないので、別の巣で繁殖しているのではないか、
と思って4月早々に観察に行ったところ。

DSC04239.JPG

こちらクマタカの雌。誇示飛翔をしています。

DSC04227.JPG

おなかの羽毛が乱れてない。
4月上旬はクマタカにとって抱卵期にあたりますが、抱卵している場合には、
たいがいおなかの羽毛が乱れます。
そういうのが見られないので、抱卵していないのではないか、と推測。

DSC04271.JPG

その後、雄も出現して雌雄でつっかかり。
これは求愛行動のようです。
繁殖していない雌雄は、こういった繁殖初期にみられるような求愛行動をよくやります。

どうやらこのつがいは今年、繁殖しなかったようです。
そうなると別の巣があるかどうかもわからないし、
またカメラを設置してある巣を使うかもしれないので、
カメラはしばらく放置するつもり。
これからも対象としていないいろんな動物が記録されることでしょう。






posted by Kankyosekkei Co., Ltd. at 21:52| 生物調査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする